1977年のMr.カラー誕生から今年で40年。模型と密接に関わってきたMr.カラーは「どうやって生まれ、どう変化してきたのか」。当連載では、当社とMr.カラーの歴史をご紹介してまいります。(不定期更新)

■共同開発のパートナー「藤倉化成株式会社」

当社と共にプラモデル用塗料を共同開発することになった藤倉化成株式会社は1938年の創業で、当初は藤倉化学工業という社名でした。当社のルーツである郡是シルクコーポレーションが立ち上げられたのが1934年だったので、ほぼ同時期に会社がスタートしたことになります。その後1945年に藤化成に改称、1958年に再度変更して現在の藤倉化成になりました。

 

創業当初は主に樹脂製の航空機用風防や航空機用塗料を生産していましたが、現在ではその事業内容は多岐に渡り、自動車部品や家電製品などプラスチック素材に対するコーティング材の開発、住宅外壁用塗料などの塗料事業、導電性樹脂材料のペーストや接着剤などを電気・電子機器分野に提供する電子材料事業、プリンタトナーや成形材料などの樹脂材料を扱う化成品事業、さらに樹脂材料から派生して体外診断薬関連の材料や試薬などのメディカル材料も手がけています。

 

藤倉化成では昔も今も技術開発に力を入れていて、売り上げの約10%が研究開発費に充てられ、従業員の1/3が研究・技術職に就いています。製品の大半は顧客とのやり取りを通じて開発されるオーダーメイド品で、これまでに無かった物もたくさん創り出してきた会社です。

 

当社が相談を持ちかけた当時、藤倉化成は自動車部品など樹脂関係の塗料のノウハウを豊富に持っていたものの、プラモデル用塗料は未経験でした。同じようなプラスチック素材とはいえ、自動車部品の素材はABSが多いのに比べ、プラモデルは主にポリスチレンが使用されています。素材の性質が異なればそれに適した塗料の組成も違ってくるため、簡単にいくとは限らず、すぐには首を縦に振ってもらうことはできませんでした。しかし、当社は国産プラモデル用塗料の必要性、そしてその為には新しい分野に挑戦することができる、藤倉化成とのパートナーシップが必要不可欠であることを根気強く説明し、最終的には快諾を得る事ができたのです。

■レベルカラー登場

こうして当社初のプラモデル用塗料の開発が始まったのですが、問題は他にもあります。それはパッケージングです。塗料が完成したとしても、それを小売りするためには容器を作り、充填する作業が必要になります。塗料の開発同様、これもまた何のノウハウも無い自社で行なうことはできません。しかしそこは商社として持ち前のリサーチ力や交渉力を活かし、瓶やフタの製造工場と充填を請け負ってくれる工場を探し出しました。

 

苦難の末、容器や充填の心配も無くなり無事開発に成功した純国産の『レベルカラー』は、満を持して1973年に発売になりました。容量は18cc。フタは現在のMr.カラーのデザインに近く、平らで周囲にギザギザの滑り止めが付いたものでした(第4回 参照)当時の価格は70円。大卒初任給でいうと当時とは約9倍の差があるそうなので、今の価格で言えば600円ほどになります。ちなみにコーヒーは約72円、ラーメンは約63円だったので、それらからすると少々高級品と感じられたかもしれません。