HOW TO HOW TO詳細
# 各種製品使用法
Mr.カラー用うすめ液5種の特徴徹底解説
文/マイスター関田 監修/㈱GSIクレオスホビー部
ドーモ、マイスター関田でございます。
こちらの記事では現在発売されているMr.カラーに使用できるうすめ液5種の特徴といくつかの比較実験の解説を通して、実際に塗装する際に使い分けるためのヒントにしていただきたいと考えています。
まず、うすめ液各種の個別解説をする前に共通の特徴と、うすめ液を比較する際のキーワードとなる「溶解力」に関して解説していきましょう。
〔共通の特徴=家庭内での使用を考慮した溶剤設計〕
一般的な工業用ラッカーは使用目的から非常に強い溶剤が配合されていて、工場用の設備のない家庭内で安全に
使用することは非常に難しいところですが、家庭内用で使用することを前提として設計されたMr.カラーは身体への影響が強い溶剤を使用せず日本の気候に合った乾燥速度と塗膜の強さを両立しています。
〔溶解力とは〕
溶解力とは樹脂成分を溶かし分散させる能力でうすめ液の特性を決める性能の一つです。
溶解力が高いほど平滑な塗膜が作りやすく、少量の添加でも光沢を出しやくなります。
また、顔料に対する分散性能にも影響し、メタリック系やパール系の仕上がりにも影響します。ただこの顔料の分散に関しては溶解力が高いほど「良くなる」というわけではなく「仕上がりが変わる」という点に注目です。状態の変化を表現のレパートリーととらえて使い分けていきましょう。
〔各薄め液の溶解力比較〕
5種のうすめ液の溶解力を比較すると以下のようになります。
というところで、上記の点を踏まえて5種のうすめ液を確認してみましょう。
【Mr.カラーうすめ液】
エアブラシで使用する際は多く添加すれば霧が細かくなる一方で垂れやすくなり、少ないとザラ付きやすいが垂れにくくなるという分かりやすくベーシックな性能。溶解力の低さが欠点と感じるケースも無し。
乾燥速度はやや早め。
配合設計としては古めでも充分に活躍できる性能を持ったロングセラーうすめ液。
エアブラシ塗装時のオススメ混合比率は塗料:うすめ液= 1 : 2。
【Mr.カラーレベリングうすめ液】オススメ用途=光沢表現
高い溶解力を持ち光沢が出やすい。垂れる寸前までしっかりと吹き付けることでかなりの光沢が期待できる。
乾燥速度は遅め。時間をかけて塗膜が硬化に向かっていくので多少少なめの配合量でも問題なく塗膜を形成できる。
入れ過ぎると非常に垂れやすくなるので注意が必要です。
エアブラシ塗装時のオススメ混合比率は塗料:うすめ液= 1 : 2。
【Mr.カラーラピッドうすめ液】オススメ用途=つや消し表現、メタリック系塗装
塗料が早く乾くことを追求したうすめ液。スミ入れやマスキング、デカール貼りといった次工程に速く進みたい場合には非常に便利。
塗料は乾燥速度が速いと仕上がりはザラつきやすくなるが、高い溶解力のおかげである程度までの光沢も期待できる。
添加量が少ないと吹き付けた塗料のミスト同士が互いに融合する前に乾燥してしまい表面がザラつきやすくなる。
エアブラシ塗装時のオススメ混合比率は塗料:うすめ液= 1 : 2。
【Mr.カラーラGGXうすめ液】
アクリル樹脂塗料の性能を引き出すために最新の素材を使って設計された新世代のうすめ液。
Mr.カラーGGXだけでなくMr.カラー・Mr.カラーGXに使用でき、むしろ光沢も出やすくなる。
乾燥速度は最も遅い。
エアブラシ塗装時のオススメ混合比率は塗料:うすめ液= 1 : 1。
【Mr.カラーラGGXラピッドうすめ液】
あくまでMr.カラーGGXの希釈に特化した溶剤なのでMr.カラー・Mr.カラーGXに使用しても特別なメリットはありません。。
乾燥速度はGGXうすめ液よりは早いもののレベリングうすめ液と同程度。
エアブラシ塗装時のオススメ混合比率は塗料:うすめ液= 1 : 1。
〔塗装状態の比較〕
それぞれのうすめ液のオススメ混合比で希釈した塗装比較サンプルです。
左からMr.サーフェイサー1000、Mr.カラーGXスージーブルー、Mr.カラースーパーメタリック スーパークロームシルバー2(黒下地)、Mr.カラースーパーメタリック スーパークロームシルバー2(Mr.サーフェイサー1000下地)
どれもオススメの混合比で希釈しているため、塗装作業に問題はなく均一な塗装面を得ることができました。
光沢塗料のスージーブルーをよく観察してみると、やはりMr.カラーレベリングうすめ液とMr.カラーGGXうすめ液で希釈したサンプルの光沢がより強く滑らかになっているのが分かります。
また、メタリック系塗料の仕上がりに関しては、それぞれのうすめ液で仕上がりの粒子感や質感に差異が見られますが、これは良い悪いではなくお好みでその時作品に取り入れたい表現を選択し使い分けたいところです。
〔実際のエアブラシ塗装作業感〕
一般的にエアブラシ塗装時のうすめ液は
多く添加→ミストが細かくなる、光沢が出やすくなる、垂れやすくなる、乾燥時間が長くなる
少なく添加→ミストが荒く大きくなる、ザラつきやすくなる、垂れにくくなる、乾燥時間が短くなる
という影響が出ますが、今回取り上げている5種のうすめ液はどうでしょうか。
今回はMr.カラーGXスージーブルーを使って各薄め液の吹き比べをしてみました。
【Mr.カラーうすめ液】
うすめ液の添加量がダイレクトに吹き付け作業に反映され他の条件も併せて設定することで幅広い使い方ができます。
【Mr.カラーレベリングうすめ液】
乾燥が遅い=液体でいる時間が長いため少しでも多めに吹き付けてしまうと、即垂れてしまうという緊張感があります。その反面そこまでしっかり吹き付けなくてもある程度のツヤが出てくれます。
グラデーション表現をする際に多めにレベリングうすめ液を添加すればうっすらとぼかす様に吹き付けた部分もミストが時間をかけて融合することで粒子感が無くなるという状態も確認できました。
【Mr.カラーうすめ液使用時】 【レベリングうすめ液使用時】
【Mr.カラーラピッドうすめ液】
とにかくしっかりと濡れるように塗料を吹き付けないとミスト同士が融合することなく乾燥してしまいザラついてしまいます。しかしその乾燥速度を利用すれば一回に大量に吹き付けてもかなり早く乾燥しテンポの良い作業進行が期待できます。
【Mr.カラーラGGXうすめ液】
従来のうすめ液であれば濃い目の希釈である1:1という混合比でも驚くほど勝手に光沢が出ます。濃い目の混合比であることは間違いないので吹き付けていて垂れることがほとんどないというのも快適です。
【Mr.カラーラGGXラピッドうすめ液】
塗料を薄めることも吹き付けることもできますが、やはりあくまでMr.カラーGGXを薄めるために設計されたうすめ液なので、Mr.カラーGXに使うとなると他のうすめ液と比較して特にメリットに感じる特性はありませんでした。
〔乾燥時間比較〕
最後に同条件で吹き付けた塗装面の乾燥状態を時間ごとに比較する実験をしました。
これまで通りオススメの混合比で薄めたMr.カラーGXスージーブルーを2回吹き付けたポリスチレン板に
5分、10分、30分、1時間、3時間、6時間のタイミングで指を10秒押し当てて跡がつくかどうかを比較しました。
ラピッドうすめ液で希釈した塗装面は10分ほどで概ね乾燥しており、特に速い乾燥速度が見て取れます。
ただ今回は一層のみの塗装だったので1時間でいずれのうすめ液でも触ってもほぼ変化が起きない状態になりました。
層を重ねて塗装する場合やさらに多めに吹き付ける塗装をする場合は、その分時間がかかることになる点に注意しましょう。
と、ここまで比較をしてきましたが、参考になりましたでしょうか。
こちらの記事が参考に皆さんの作品にとって最適のうすめ液選びの参考なれましたら幸いです。